冬は登山のオフシーズン、と思われがちですが、関東の低山は冬こそ楽しい季節でもあります。人が少なくて静かな山道、ロウバイや梅の花、夕方の山頂から見る富士山のシルエット。雪山に行かなくても、冬ならではの景色はたくさんあります。
ただ、冬の山には、日が短い・道が凍る・寒いという、ほかの季節にはない危なさもあります。この記事では、関東で冬に楽しめる初心者向けの低山と、冬の服装・装備、気をつけたいことをまとめました。
先に結論:冬の低山で気をつけたいのは日没の早さと道の凍結です。東京の日の入りは12月上旬で16時28分。午後の早い時間に下山を終える計画にして、ヘッドライトと、凍った道に備えたチェーンスパイクなどの滑り止めを持っていきましょう。
冬の低山で気をつけたい3つのこと
1. 日が暮れるのが早い
冬は1年でいちばん日が短い季節です。国立天文台の計算では、東京の日の入りは12月上旬に16時28分と、1年でいちばん早くなります。冬至(2026年は12月22日)より前に、日の入りのいちばん早い日が来るのがポイントです。
| 日付 | 東京の日の入り | 出典 |
|---|---|---|
| 2026年12月1日 | 16:28 | 国立天文台 |
| 2026年12月22日(冬至) | 16:32 | 国立天文台 |
| 2027年1月1日 | 16:38 | 国立天文台 |
| 2027年1月31日 | 17:07 | 国立天文台 |
| 2027年2月28日 | 17:35 | 国立天文台 |
山の中は、木や山の陰になるので、日の入りの時刻より早く暗くなります。警察庁も、筑波山について「冬期間は夕暮れも早く、午後遅くなってからの登山は道迷い等の事故につながります」と注意しています。遅くとも15時ごろには下山を終えられる計画にしておくと安心です。
2. 道が凍る・ぬかるむ
冬の登山道は、雪がなくても凍っていることがあります。警察庁は丹沢について「12月から3月にかけ朝晩の冷え込みで霜に覆われ、日中の日差しで霜が解けてぬかるみになり滑りやすくなります」と説明しています。北向きの斜面や日陰は、昼間でも凍ったままのことがあります。
筑波山でも、2025年1月に凍った岩場で足を滑らせて重傷を負った事故が起きています。低山だからと油断せず、滑りにくい靴と滑り止めを用意しましょう。
3. 寒さと汗冷え
歩いている間は体が温まって汗をかきますが、休憩で立ち止まると一気に冷えます。汗で濡れた服は体温を奪うので、脱ぎ着して汗をかきすぎないようにするのが冬の歩き方のコツです。
関東の冬におすすめの低山
冬ならではの見どころがあって、初心者でも歩きやすい関東の低山を選びました。花の見頃や営業時間は年によって変わるので、出かける前に公式の情報を確認してください。
| 山 | 冬の見どころ | 行きやすさ |
|---|---|---|
| 宝登山(埼玉) | ロウバイ園(12月下旬〜2月下旬) | ロープウェイあり |
| 幕山(神奈川) | 湯河原梅林(2027年は2月6日〜3月7日) | ふもとの梅林から歩く |
| 高尾山(東京) | 冬至前後のダイヤモンド富士 | ケーブルカー・リフトあり |
| 筑波山(茨城) | 筑波山梅まつり(例年2〜3月) | ロープウェイあり(ケーブルカーは休止中) |
| 弘法山(神奈川) | 山頂からの360度の眺め | 駅から駅へ歩ける |
| 鋸山(千葉) | 海の見える岩山 | ロープウェーあり |
宝登山(埼玉・長瀞/497m)
冬の低山の定番です。山頂近くのロウバイ園には約800株のロウバイがあり、公式サイトでは開花時期を「12月下旬から2月下旬」としています。黄色い花と甘い香りは、冬の山ならではの楽しみです。
宝登山ロープウェイを使えば約5分で山頂駅に着き、運賃は大人往復1,200円です。秩父鉄道の長瀞駅から歩いて20分ほどで、ロウバイの時期は駅とふもとを結ぶ無料シャトルバスが走る日もあります。
幕山(神奈川・湯河原/626m)
ふもとに約4,000本の梅が咲く湯河原梅林があり、梅を見ながら山頂まで歩けます。湯河原温泉の公式サイトによると、2027年の「梅の宴」は2月6日から3月7日まで。期間中は入園料300円(15歳以上、中学生を除く)がかかります。
帰りに湯河原温泉に寄れるのも、冬ならではのうれしいところです。
高尾山(東京/599m)
冬至のころの夕方、山頂から富士山の真上に太陽が沈む「ダイヤモンド富士」が見られることで知られています。2025年は12月17日から28日が見ごろとされ、ケーブルカーも夕方まで延長運転しました。
ただし夕方の下山は暗くなります。高尾ビジターセンターも「下山の際は、1号路でも街灯がないところがあります」として、ヘッドライトの携行を呼びかけています。高尾山薬王院も「早春まで凍結があり、秋から冬は早く陽が落ちます」と注意しています。
筑波山(茨城/877m)
中腹の梅林で開かれる筑波山梅まつりは、2026年は2月7日から3月15日まででした。山頂近くまではロープウェイで上がれます。
2026年9月の注意:筑波山ケーブルカーは、2026年9月25日から「当面の間、安全確認のため運行休止」と公式に発表されています(ロープウェイは通常運行)。冬に出かける前に、筑波山の公式サイトで運行状況を確認してください。
弘法山(神奈川・秦野)
小田急線の秦野駅から鶴巻温泉駅まで、弘法山と吾妻山を通って歩けるコースがあります。秦野市観光協会によると、全長約7.4kmで、歩く時間は約2時間10分。展望台からは360度の景色が楽しめます。
駅から駅へ歩けるので車が要らず、ゴールの鶴巻温泉で温まって帰れるのも魅力です。
鋸山(千葉/329m)
東京湾と富士山が見える房総の岩山です。鋸山ロープウェーは山頂駅まで約4分で、冬(11月16日〜2月15日)の営業は9時から16時です。
毎年1月中旬ごろに、点検のため1週間〜1か月ほど運休するので、1月に行くなら運休日を確認しておきましょう。鋸山の歩き方は鋸山に登ってきた|地獄のぞき・日本寺でも紹介しています。
鎌倉アルプスのような海の近くのハイキングコースも冬に人気ですが、倒木などで一部の道が通行止めになることがあります。鎌倉市などの最新の案内を確認してから出かけてください。
冬の服装は「3枚重ね」が基本
冬の山の服装は、肌に触れる服、保温する服、風を防ぐ服の3枚を重ねて、暑さ寒さに合わせて脱ぎ着するのが基本です。モンベルも、冬山の服装を「アウター・ミドル・ベースレイヤーの3層で構成」するものとして説明しています。
| 重ね方 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| ベースレイヤー(肌着) | 汗を吸って乾かす | 化繊やウールの長袖。綿は汗が乾きにくく冷える |
| ミドルレイヤー(中間着) | 体温をためて保温する | フリースや薄手のダウン |
| アウター(上着) | 風と雨・雪を防ぐ | 防水・防風のジャケット |
手袋、ニット帽、ネックウォーマーなど、首・手首・足首をおおう小物もあると、体感はかなり違います。重ね着の考え方は冬キャンプの服装|レイヤリングの基本でも詳しく書いています。
冬の低山に持っていきたい装備
基本の装備はほかの季節と同じですが、冬は「暗さ」「凍結」「寒さ」への備えを足します。警察庁の「冬山情報」でも、ヘッドライト(予備の電池も)、保温ボトル、行動食、防寒着、予備の手袋などが必携の装備に挙げられています。
| 装備 | 冬に必要な理由 |
|---|---|
| ヘッドライト(予備の電池も) | 日没が早い。予定より遅れたときの命綱 |
| チェーンスパイク・軽アイゼン | 凍った道や日陰で滑らないように |
| 防寒着(フリース・ダウン) | 休憩や山頂で冷えないように |
| 手袋(予備も) | 濡れると冷たく、手がかじかむ |
| 保温ボトル・行動食 | 体の中から温まり、エネルギーを補う |
| 地図アプリ・モバイルバッテリー | 寒さで電池の減りが早くなることがある |
チェーンスパイクと軽アイゼンはどう選ぶ?
靴に付けて使う滑り止めです。好日山荘の解説では、チェーンスパイクは「積雪が少なく、傾斜の緩やかな低山や、雪が踏み固められた雪道」向きとされ、例として高尾山周辺の凍結路が挙げられています。迷ったら「対応幅の広い6本爪の軽アイゼン」がすすめられています。
関東の低山なら、まずはチェーンスパイクがあると安心です。凍った場所の手前で付け、歩きにくくなったら外す、という使い方をします。
装備を一からそろえるなら登山・ハイキングの始め方|初心者が最初にそろえる装備、道迷い対策には登山地図アプリの選び方・使い方も参考にどうぞ。
山の事故は「道迷い」がいちばん多い
警察庁によると、2025年の山岳遭難は3,122件で、遭難した人は3,623人。原因でいちばん多いのは道迷いで30.9%、次いで転倒19.2%、滑落17.3%でした。高尾山の遭難者も106人と、例年より増えています。
警視庁は「東京都の山は、山頂までの道程は長くありませんが、高低差が大きく急峻な箇所が多くあります。また作業道等の枝道も点在し、道迷いが発生しやすい」と注意しています。低山でも、地図を持ち、登山計画を家族に伝えてから出かけましょう。
よくある質問
冬でも初心者が登山をして大丈夫?
雪の積もらない関東の低山なら、初心者でも楽しめます。ただし日没が早く、道が凍ることもあるので、ほかの季節より早い時間に出発・下山し、滑り止めとヘッドライトを持っていくのが条件です。
アイゼンは必要?
関東の低山で雪がなければ、本格的なアイゼンは要らないことがほとんどです。ただ、凍った道や日陰に備えて、チェーンスパイクや軽アイゼンがあると安心です。警察庁も、丹沢の北側斜面や日陰について「登山には軽アイゼンが必要です」としています。
何時までに下山すればいい?
東京の日の入りは12月で16時30分前後です。山の中はそれより早く暗くなるので、遅くとも15時ごろには下山を終えられる計画がおすすめです。
スニーカーでも大丈夫?
整備された道が中心の山なら歩けないことはありませんが、冬は凍結やぬかるみで滑りやすくなります。靴底が硬く、溝の深い登山靴のほうが安心です。線引きはスニーカーで登山はダメ?で詳しく書いています。
雪が降ったらどうする?
関東の低山でも、雪が降ると道の様子が大きく変わります。雪山の装備や経験がないなら、雪が積もっている日は無理をせず、別の日に延期しましょう。
まとめ
関東の冬の低山は、ロウバイや梅、冬至のころのダイヤモンド富士など、冬ならではの景色が楽しめます。人が少なく静かな山道も、冬のハイキングの魅力です。
そのぶん、日没の早さと道の凍結には注意が必要です。早めの出発と下山、ヘッドライトと滑り止め、脱ぎ着しやすい服装。この3つをそろえて、冬の山を楽しんでください。
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