「生活保護を受けているけど、子どもをどこかに連れて行ってあげたい」。そう思うのは、親としてとても自然なことです。でも同時に、「旅行なんて行ったら怒られるんじゃないか」「保護を止められたらどうしよう」と不安になりますよね。
この記事では、生活保護を受けながら子どもと旅行するときに知っておきたいルールを、生活保護法や厚生労働省の通知、自治体の手引きをもとに整理しました。
旅行前に何を確認すればいいか、旅費はどのお金ならいいか、修学旅行の費用はどうなるか、海外はどうか、まで順番に説明します。

先に結論:生活保護を受けていても、旅行を禁止する決まりは見当たりません。気をつけたいのは「家を長く空けるときの届出」と「旅費の出どころ(収入の申告)」の2つです。扱いは福祉事務所の判断なので、出かける前にケースワーカーに相談するのが確実です。
ご注意:生活保護の細かい取り扱いは、自治体や個別の事情で変わります。この記事は一般的なルールの説明です。実際に旅行できるか、どのお金が使えるかは、必ず担当の福祉事務所に確認してください。
生活保護で旅行は禁止されている?
生活保護法や厚生労働省の通知を見ても、旅行そのものを禁止する決まりは見当たりません。保護費は生活のためのお金ですが、毎月のやりくりの中で何にどう使うかまで細かく決められているわけではないからです。
海外についても、大阪高等裁判所の判決(2004年)が、旅行などで一時的・短期間だけ国外にいて、国内の住まいがそのまま残っている場合は、生活の本拠は国内にあると判断しています。旅行に行ったというだけで、すぐに保護の対象から外れるわけではありません。
ただし、何でも自由というわけでもありません。守らないといけないのは、次の2つです。
- 届出:生活保護法61条で、生計の状況が変わったときや住まい・世帯に変化があったときは届け出る義務があります。長く家を空けるときも届出を求める自治体があります
- 収入の申告:旅費を誰かに出してもらった、子どもがアルバイトで稼いだ、といったお金は、収入として扱われることがあります
旅行の前に確認したい3つのこと
出かける前に、この3つを整理しておくと、ケースワーカーへの相談もスムーズです。
| 確認すること | なぜ大事? | どうする? |
|---|---|---|
| 家を空ける期間 | 長く留守にするときは届出を求める自治体がある | 行き先・期間・理由を事前に伝える |
| 旅費の出どころ | 誰かからもらったお金は収入として扱われることがある | どのお金で行くか説明できるようにする |
| 子どもの学校行事か | 修学旅行や校外活動は別の仕組みで費用が出る | 学校と福祉事務所に確認する |
何泊から届出が必要?
ネットでは「1〜2泊なら連絡不要、3日以上なら連絡」といった目安を見かけますが、通知などに何泊という基準は見当たりませんでした。
たとえば岐阜市の「生活保護のてびき」では「帰省などで家を長期間留守にするとき」を届出が必要な場合に挙げていますが、日数は書かれていません。
つまり、何日からが「長期間」かは自治体や担当者の運用しだいです。泊まりで出かけるなら、日数にかかわらず一言伝えておくのが安心です。
旅費はどのお金ならいい?
いちばん気になるのがここだと思います。お金の出どころによって、扱いが変わります。
保護費をやりくりして貯めたお金
厚生労働省の通知では、保護費のやりくりで貯めたお金は、使い道を聞いたうえで、生活保護の趣旨や目的に反しないと認められれば、持っていて差し支えないとされています(東京都行政不服審査会の答申で引用されている通知による)。
ただ、「国内旅行ならOK」とはっきり書いた通知は見つかりませんでした。目的がはっきりしない貯金が大きくなると、指導の対象になることもあります。「子どもの思い出に、少しずつ貯めて日帰りで出かけたい」など、目的と金額を正直に相談しておくのがいちばんです。
親や友人が旅費を出してくれる場合
人からもらったお金(恵与金)は、原則として収入として扱われ、その分だけ保護費が減ることがあります。冠婚葬祭のご祝儀や香典、自立のために使われるお金などは収入として扱わない例外がありますが、「旅行のために出してもらったお金」がどうなるかは個別の判断です。
受け取る前に相談し、受け取ったら必ず申告する。これだけは守ってください。申告しないまま後でわかると、返還を求められることがあります。
子ども(高校生)のアルバイト代
高校生の子どものアルバイト代も、原則は世帯の収入です。ただし、岐阜市の手引きでは、高校生のアルバイト収入のうち修学旅行費や授業料の不足分、学習塾代、進学の入学金などに充てると認められたものは、収入として認定しない取り扱いがあると説明されています。
申請が必要なので、使い道が決まったら早めにケースワーカーに伝えましょう。
海外旅行はどうなる?
海外については、厚生労働省の通知(昭和38年の保護課長通知)に考え方が示されています。東京都行政不服審査会の答申書で引用されている内容をまとめると、次のとおりです。
- 海外へ行けるだけのお金を持っていたとして、渡航費は原則として収入として扱われる
- ただし、おおむね2週間以内で、①親族の冠婚葬祭・危篤・お墓参り、②修学旅行、③公的機関が主催する国際大会への参加(選ばれた・招待された場合)、④高校生の留学で自立に役立つもの、をやりくりの貯金でまかなう場合は認められる
- 一時的・短期間の渡航なら、それだけで保護が止まるわけではない(目安はおおむね1〜2か月)
観光目的の海外旅行は、この例外に入りません。東京都の運用事例では、旅行中の生活費にあたる額などを収入として扱う考え方が示されています。海外を考えているなら、行く前に必ず相談しましょう。
修学旅行・学校行事の費用はどうなる?
子どもがいる家庭で大事なのが、学校の行事です。「修学旅行は生活保護から出る」と思われがちですが、実は小中学校と高校で仕組みが違います。
| 学校 | 修学旅行費 | そのほかの行事 |
|---|---|---|
| 小学校・中学校 | 就学援助(要保護児童生徒援助費補助金)から出る。学校に申し出る | 遠足・社会見学などは教育扶助。泊まりの校外活動は実費が出る |
| 高校 | 生活保護の高等学校等就学費の対象外 | 奨学給付金、生活福祉資金の貸付、本人のアルバイト代(申請で収入から除外)などでまかなう |
高校の修学旅行費が対象外であることは、厚生労働省の問答集の資料に、生活福祉資金の貸付や修学旅行のための親戚からの援助、本人のアルバイト収入などでまかなうよう書かれています。
小中学校の修学旅行費が就学援助で対応されていることは、厚生労働省の生活保護基準部会の資料で確認できます。
高校生がいる世帯は、都道府県の「高校生等奨学給付金」も対象になります。金額や申請時期は都道府県ごとに違うので、学校か都道府県の窓口で確認してください。
「不正受給」になるのはどんなとき?
旅行に行ったこと自体が不正になるわけではありません。問題になるのは、届け出るべきことを届け出なかった、収入を申告しなかった、というケースです。
生活保護法では、受け取った保護費を返す決まり(63条)のほか、不正な手段で保護を受けた場合は費用を徴収し、さらにその40%以下を上乗せして徴収できる決まり(78条)があります。
悪質な場合は、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金という罰則(85条)もあります。
旅行に行ったら「バレる」?
「バレるかどうか」で考えるのは、あまりおすすめしません。福祉事務所は生活保護法29条にもとづいて、銀行などに資産や収入を問い合わせることができます。隠して後からわかると、返還や不正受給の扱いになり、かえって大きな負担になります。
逆に、事前に相談しておけば、届出も申告も済んだ状態で、堂々と出かけられます。ケースワーカーへの相談は「許可をもらう」というより、「あとで困らないように確認しておく」ためのものだと考えてください。
子どもとの旅行費用を抑えるコツ
限られた予算でも、工夫すれば子どもが喜ぶお出かけはできます。
交通費を抑える
遠くへ行くなら、新幹線より高速バスや夜行バスのほうがかなり安く移動できます。新幹線を使うなら、早めの予約割引などを活用しましょう(新幹線を安く乗る方法まとめ)。
青春18きっぷは、2026年現在、連続3日間用(10,000円)と連続5日間用(12,050円)の2種類で、以前のように1日ずつ分けて使うことはできません。日程に余裕がある旅向けです。詳しくは青春18きっぷの使い方2026で解説しています。
JR東日本のポイントがたまっているなら、行き先おまかせで新幹線に乗れる「どこかにビューーン!」も候補になります(どこかにビューーン!の仕組みと使い方)。
泊まらずに楽しむ
いちばん費用を抑えられるのは、日帰りです。宿泊費がかからないうえ、家を空けるのも1日で済みます。近場の公園や海、山でも、子どもにとっては立派な冒険です。
日帰りでも外でごはんを作るだけで、ぐっと旅行気分になります。デイキャンプの始め方や、竿のレンタルがある関東の海釣り公園は、子連れでも気軽に楽しめます。泊まりで行くなら、連休を外した平日や、素泊まりのプランを選ぶと宿代を抑えられます。
よくある質問(Q&A)
日帰りでもケースワーカーに言うべき?
日帰りの外出まで届け出る決まりは見当たりません。ただ、旅費を誰かに出してもらうなど、お金の出どころに気になる点があるなら、日帰りでも相談しておくと安心です。
実家への帰省はどうなりますか?
帰省も、家を長く空けるなら届出の対象になることがあります(岐阜市の手引きでも「帰省などで家を長期間留守にするとき」と書かれています)。期間の決まりは自治体で違うので、日程が決まったら伝えましょう。
友人や親戚が車で連れて行ってくれるのは?
交通費や宿代を出してもらう形になる場合、それが収入として扱われるかどうかは個別の判断になります。行く前に「誰に、何を出してもらうか」を伝えて確認しておくのが確実です。
ケースワーカーに反対されたら?
まずは理由を聞いてみましょう。生活保護法27条では、福祉事務所の指導や指示は、本人の自由を尊重し、必要最小限にとどめるべきとされています。
納得できないときは、どの決まりにもとづく判断なのかを確認し、行き先や日程、費用を見直して改めて相談するのもひとつの方法です。
旅行したら保護を打ち切られますか?
旅行に行ったことだけを理由に打ち切られる決まりは見当たりません。ただし、届出や申告をしなかった場合や、海外に長く(おおむね1〜2か月を超えて)滞在する場合などは、保護の停止や廃止につながることがあります。
まとめ|相談は「許可」ではなく「確認」
生活保護を受けていても、旅行を禁止する決まりは見当たりません。大事なのは、家を長く空けるときの届出と、旅費の出どころの申告です。修学旅行は小中学校なら就学援助、高校は奨学給付金やアルバイト代などで、と仕組みが分かれています。
出かける前にケースワーカーに一言相談しておけば、あとで困ることはぐっと減ります。日帰りや格安の移動手段も組み合わせて、子どもとの思い出づくりを楽しんでください。
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