台風は、地震と違って「来るのが事前にわかる」災害です。だからこそ、風が強くなる前にどれだけ準備できたかで、被害は大きく変わります。
この記事では、台風が近づいてきたときにやることを、数日前・前日・接近中・通過後の順番でチェックリストにしました。
家まわり、停電・断水、車とバイク、避難の判断まで、気象庁や農林水産省、JAFなどの情報をもとにまとめています。上から順に□を埋めていけば、やり忘れがなくなります。
いちばん大事なこと:外の作業は風が強くなる前に終わらせる。気象庁の目安では、風速15m/sを超えると風に向かって歩けなくなり、20m/sを超えると何かにつかまらないと立っていられません。荒れ始めてからベランダや車の様子を見に行くのが、いちばん危険です。
まず知っておきたい|台風情報の見方
ニュースや天気アプリで見る台風の図には、白い点線の円や赤い線が描かれています。意味を知っておくと、いつ動くべきか判断しやすくなります。
| 用語 | 意味 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 予報円(白い点線) | その時刻に、台風の中心が70%の確率で入る範囲 | 円が大きいのは「進路がまだ定まらない」という意味。台風が大きくなるわけではない |
| 暴風警戒域(赤い線) | 中心が予報円内に進んだ場合に、暴風域に入るおそれのある範囲 | 自分の地域が入っていたら、備えを前倒しに |
| 強風域 | 平均風速15m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲 | ここに入る前に外の作業を終える |
| 暴風域 | 平均風速25m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲 | 屋外での行動は危険。家の中で過ごす |
出典:気象庁「台風情報の種類と表現方法」「台風の大きさと強さ」
風速ごとに何が起きる?
気象庁の「風の強さと吹き方」では、風速ごとの影響が次のようにまとめられています。ここでいう風速は10分間の平均で、瞬間的にはその1.5倍程度、ときには3倍以上の風が吹くこともあります。
| 平均風速 | 人への影響 | まわりの様子 |
|---|---|---|
| 15〜20m/s | 風に向かって歩けない。転倒する人も出る | 看板やトタン板が外れ始める。雨戸やシャッターが揺れる |
| 20〜30m/s | 何かにつかまっていないと立っていられない。飛来物でけがのおそれ | 屋根瓦が飛ぶものがある。通常の速度で車を運転するのが難しくなる |
| 30m/s以上 | 屋外での行動は極めて危険 | 金属屋根がめくれる(30〜)、走行中のトラックが横転する(35〜)、住家で倒壊するものがある(40〜) |
台風前チェックリスト|時系列でやること
数日前(進路予想に自分の地域が入ったら)
- □ ハザードマップで、自宅の浸水・土砂災害の危険を確認する
- □ 避難場所と経路を家族で確認し、はぐれたときの連絡方法を決めておく
- □ 飲み水を用意する(1人1日3リットルが目安)
- □ 食料を最低3日分、できれば1週間分そろえる
- □ カセットコンロとボンベを確認する(ボンベは1人1週間で約6本が目安)
- □ 懐中電灯・ラジオ・乾電池・簡易トイレ・常備薬をそろえる
前日〜風が強くなる前
- □ ベランダ・庭の物(植木鉢、物干し竿、自転車、ゴミ箱など)を家の中へ入れるか、しっかり固定する
- □ 雨戸・シャッターを閉め、窓の鍵をかける
- □ 雨戸がない窓は飛散防止フィルムやテープで補強し、カーテン・ブラインドを閉める
- □ 排水口・側溝・雨どいの落ち葉やゴミを取り、水はけをよくする
- □ 浴槽に水をためる(断水時のトイレ・手洗い用。飲み水は別に用意)
- □ スマホ・モバイルバッテリー・ポータブル電源・ランタンを満充電にする
- □ 車・バイクを浸水しにくい場所へ移動し、バイクは風の対策をする(くわしくは下で)
- □ 非常持ち出し袋を玄関近くに置く(両手が使えるリュックがおすすめ)
接近中・暴風雨のあいだ
- □ 不要不急の外出はしない。田んぼ・用水路・川・海の様子を見に行かない
- □ テレビ・ラジオ・自治体の情報で、警戒レベルと避難情報を確認する
- □ 窓から離れた部屋で過ごす
- □ 避難が必要なら、暗くなる前・風雨が強まる前に動く
- □ 外に出るのが危険になったら、家の中のより安全な場所(2階など、崖や川から離れた部屋)へ移る
通過したあと
- □ 切れた電線や垂れ下がった電線には絶対に近づかない・触らない(電力会社へ連絡)
- □ 水に浸かった車はエンジンをかけない(販売店やロードサービスに相談)
- □ 片付けや修理の前に、被害の様子を写真に撮る(保険の請求に使う)
- □ 屋根や高い所の点検は無理をしない。業者に頼む
- □ 増水した川や崩れた斜面には、しばらく近づかない
家の外・中の備えは気象庁「台風や大雨に備えて」、備蓄の量は農林水産省「今日からできる家庭備蓄」をもとにしています。
窓・ベランダの備え|養生テープは効く?
台風対策でいちばん多い疑問が「窓に養生テープを貼れば大丈夫?」です。気象庁は、窓ガラスに飛散防止フィルムなどを貼り、万一の飛来物に備えてカーテンやブラインドを下ろしておくよう呼びかけています。
テープで補強する人も多いですが、フィルムもテープも、役割は割れたガラスが部屋に飛び散るのを抑えることです。物が飛んできてガラスが割れること自体を防ぐものではありません。雨戸やシャッターがあるなら、それを閉めるのが先です。
もうひとつ大事なのが、飛んでくる物を減らすこと。ベランダの植木鉢や物干し竿は、それ自体が凶器になります。自分の家の窓を守るためにも、近所の家のためにも、外の物は前日までに片付けておきましょう。
停電・断水の備え
台風では、強風で電線が切れて停電したり、浄水場の停電や水道管の被害で断水したりすることがあります。
| 備えるもの | 目安 | ひとこと |
|---|---|---|
| 飲み水 | 1人1日3リットル(飲む分と調理の分) | 最低3日分、できれば1週間分 |
| 生活用水 | 浴槽にためておく | トイレを流す・手を洗う用。飲まない |
| 食料 | 最低3日分〜1週間分 | 火を使わずに食べられる物も入れる |
| カセットボンベ | 1人1週間で約6本 | 使用期限はボンベ約7年、コンロ約10年が目安 |
| 明かり・電源 | 懐中電灯、ランタン、モバイルバッテリー、ポータブル電源 | 前日までに満充電 |
出典:農林水産省「今日からできる家庭備蓄」
キャンプ道具を持っているなら、それがそのまま防災グッズになります。LEDランタン、カセットコンロ、クーラーボックス、寝袋、ポータブル電源は、停電中の心強い味方です(キャンプ道具は防災グッズになる)。
家の中で火を使う道具に注意:停電で寒い・暗いからといって、炭火やキャンプ用のストーブを締め切った室内で使うと、一酸化炭素中毒の危険があります。屋外用の道具は屋外で使いましょう(一酸化炭素中毒の危険と対策)。
停電が長引いたときの電源には、ポータブル電源が役立ちます。容量の選び方はポータブル電源の選び方で解説しています。
避難の判断|警戒レベルの意味
自治体は、危険の度合いに合わせて「警戒レベル」をつけて避難の情報を出します。
| 警戒レベル | 自治体が出す情報 | とるべき行動 |
|---|---|---|
| レベル3 | 高齢者等避難 | 高齢の方や体の不自由な方などは危険な場所から避難。ほかの人も避難の準備を |
| レベル4 | 避難指示 | 危険な場所にいる人は全員避難 |
| レベル5 | 緊急安全確保 | すでに災害が起きているか、迫っている。ただちに命を守る行動を |
レベル4までに避難を終えるのが基本です。気象庁は、避難指示などが出ていなくても、警戒レベル4に相当する情報が出たら、自分で避難を判断するよう呼びかけています。
なお、2026年から気象庁の情報は「レベル3警報」「レベル4危険警報」「レベル5特別警報」のように、レベルの数字がついた名前で発表されています(気象庁:防災気象情報と警戒レベル)。
避難先は、指定の避難場所だけとは限りません。気象庁は、指定された避難場所へ向かうことにこだわらず、川や崖から少しでも離れた近くの頑丈な建物の上層階に避難するなど、その時点で最善の行動をとるよう呼びかけています。
車とバイクの備え
車は「冠水した道に入らない」が鉄則
大雨のときに多いのが、冠水した道路やアンダーパスに車ごと入ってしまう事故です。JAFのテストでは、水深30cmの冠水路を時速10kmで走ると3台とも走り切れましたが、時速30kmでは車体の部品が外れるなどの被害が出ました。
水深60cm・時速40kmでは、軽自動車が途中でエンジンが止まり、浮いた状態で止まっています。
JAFは、水深30cmでもすでに車内やエンジンルームに水が入っていて、走り切れてもその後使えなくなる可能性があると指摘しています。見た目では水の深さはわかりません。冠水した道には入らない、これに尽きます。
置き場所は、地下や半地下の駐車場、川の近くなど、水が集まりやすい場所を避けましょう。浸水してしまったときの対応は車が冠水・水没したらにまとめています。
バイクは「カバーをかけない」
意外と知られていないのがここです。ヤマハ発動機のメンテナンス情報では、台風のときはバイクカバーをかけないのが基本とされています。カバーが風を受けて、転倒しやすくなるからです。
- □ カバーは外す(吸気口やマフラーはビニール袋とマスキングテープで水が入らないようにする)
- □ ギアは1速に入れる
- □ センタースタンドより、風に強いサイドスタンドで止める
- □ 壁があれば寄せて、サイドスタンド側を壁に向ける
- □ できれば左右からロープで固定する
- □ 舗装されていない柔らかい地面は避ける
浸水が心配な場所なら、近くの高台や屋内の駐車場、知人の家などへ移すことも考えましょう。水害からバイクを守る方法はバイクを水害から守る方法で詳しく紹介しています。
通過後の片付けと保険
台風の被害は、火災保険(住まい)や車両保険(車)で補償される場合があります。日本損害保険協会は、被害を受けたら加入している保険会社や代理店に連絡するよう案内しています。
なお、保険金の請求に自治体の罹災証明書は原則いりません。片付けや修理を始める前に、被害の様子がわかる写真を撮っておくと、保険会社に説明しやすくなります。
また、台風のあとには「保険を使えば無料で修理できる」と勧誘する業者が出てくることがあります。日本損害保険協会も注意を呼びかけているので、すぐに契約せず、まず自分の保険会社に相談しましょう。
よくある質問(Q&A)
台風の備えは、いつから始めればいい?
進路予想に自分の地域が入ったら、数日前から買い出しや確認を始めましょう。ベランダの片付けや車の移動など外の作業は、強風域(風速15m/s以上)に入る前に終わらせるのが目安です。
窓は養生テープを貼れば大丈夫?
テープやフィルムは、割れたガラスの飛び散りを抑えるためのものです。ガラスが割れるのを防ぐわけではないので、雨戸やシャッターがあれば閉め、カーテンも閉めて、窓から離れた部屋で過ごしましょう。
浴槽にためた水は飲めますか?
浴槽の水は、トイレを流したり手を洗ったりする生活用水として使います。飲み水は、ペットボトルなどで別に用意しておきましょう(1人1日3リットルが目安)。
バイクにカバーをかけたほうが守れますか?
台風のときは逆効果になりやすいです。カバーが風を受けて転倒しやすくなるので、ヤマハ発動機もカバーなしを基本としています。吸気口やマフラーだけビニール袋などでふさぎ、サイドスタンドで壁側に寄せて止めましょう。
避難先は避難所しかないの?
避難先は指定の避難場所だけではありません。気象庁も、川や崖から少しでも離れた近くの頑丈な建物の上層階への避難などを挙げています。どこへ行くかは、ハザードマップを見て事前に決めておくのが安心です。
まとめ
台風は事前にわかる災害です。数日前に情報と備蓄を確認し、前日には外の物を片付けて窓・排水口・車とバイクの対策を済ませる。接近中は外に出ず、警戒レベル4までに避難を終える。通過後は電線と冠水車に気をつけて、写真を撮ってから片付ける。
このページのチェックリストを、台風が来るたびに上から順に見返してみてください。
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