せっかく釣った魚、家に着いたら身がやわらかくて生臭い……なんてことになると悲しいですよね。持ち帰り方ひとつで、同じ魚でも味はかなり変わります。
この記事では、釣り場で作る「潮氷(しおごおり)」の作り方から、魚の大きさに合わせた締め方・血抜き、帰り道の冷やし方、家に着いてからの下処理、そして食べる前に知っておきたいアニサキスや持ち帰りのルールまで、順番どおりにまとめました。
先に結論:釣れたらすぐ冷やすのが一番大事です。アジやイワシなどの小さい魚は、海水と氷で作った潮氷にそのまま入れるだけでOK。30cm前後から上の魚は、締めて血を抜いてから潮氷へ。家に着いたら、その日のうちに内臓とエラを取る。この3つで十分おいしく持ち帰れます。
ご注意:締めや血抜きでは刃物を使います。暴れる魚を押さえながらの作業になるので、手元と周りの人に気をつけて、無理のない範囲で行ってください。
まず結論|魚の大きさ別・釣れたらやること
「どの魚に何をすればいいの?」がいちばん迷うところなので、先に早見表にしました。サイズはあくまで目安です。
| 魚の大きさ(例) | 釣れたらすぐ | 帰るまで |
|---|---|---|
| 小型(アジ・イワシ・サバの小さいもの・ハゼ・シロギスなど、手のひらサイズ) | そのまま潮氷へ入れる(氷締め) | 潮氷に入れたまま |
| 中型(30cm前後のサバ・アジ・カサゴ・メバルなど) | 脳締め+血抜きをしてから潮氷へ | 袋に入れて潮氷で冷やす |
| 大型(タイ・ヒラメ・青物など) | 脳締め+血抜き。できれば神経締めも | 袋に入れ、大きめのクーラーで |
小さい魚にまで血抜きをする必要はありません。数が釣れるサビキ釣りなら、どんどん潮氷に入れていけば大丈夫です。逆に、刺身にしたい大きめの魚は、ひと手間かけた分だけ味がはっきり変わります。
潮氷の作り方|釣り場で海水を足すだけ
潮氷は、クーラーボックスの氷に海水を注いだ、冷たい海水のプールのようなものです。氷のかたまりに魚をのせるより、魚の全体に冷たい水が触れるので、ずっと早く冷えます。
用意するもの
- クーラーボックス:水抜き栓が付いていると、帰りに水を減らすのが楽です
- 氷:板氷やロックアイス。凍らせたペットボトルも使えます
- 水くみバケツ:ロープ付きのものが堤防で便利
- ビニール袋:中型以上の魚を入れる用に数枚
作り方の手順
- 家を出る前に、クーラーへ氷を入れておく(現地に着くまで溶かさないため)
- 釣り場に着いたら、バケツで海水をくむ
- 氷が浸かるくらいまで海水を注ぎ、軽くかき混ぜて冷やす
- 釣れた魚を入れていく。氷が減ってきたら足す
ポイントは、魚を入れるのを「冷えてから」にすること。海水を入れた直後はまだぬるいので、少し混ぜて冷たくなってから入れましょう。
なぜ真水ではなく海水なの?
いちばんの理由は温度です。塩分を含んだ海水の氷は、真水の氷より低い温度になります。北海道立総合研究機構の資料では、塩分3.1%の海水氷はおよそ−1.9〜−3.8℃と、0℃より低くなることが示されています。
もうひとつは、真水に長く浸けると身が水っぽくなりやすいと言われることです。溶けた氷の水は真水なので、海水を足しておけばその心配も減らせます。
ただし、冷えすぎにも注意が要ります。同じ資料では、魚が凍り始める温度は−1〜−2℃とされ、海水氷で冷やしすぎると魚の目が白く濁ったり、表面の色が変わったりすることがあると書かれています。長い時間入れておく大きめの魚は、袋に入れてから潮氷に沈めると安心です。
氷の量の考え方
「何キロ必要」と決まった数字はありません。目安にしたいのは、帰りまで氷が残っているかどうかです。海水氷は真水の氷より溶けるのが早いので、少なめだと途中でただの海水になってしまいます。
夏や長い釣りの日は多めに持っていき、足りなくなったら途中で買い足すつもりでいるのが確実です。凍らせたペットボトルは、溶けても水が漏れず、最後は飲み水にもなるので重宝します。氷を長持ちさせる詰め方は、クーラーボックスの氷が長持ちする詰め方にまとめています。
締め方|氷締め・脳締め+血抜き・神経締めの違い
「締める」とは、魚を素早く絶命させること。暴れ続けると身が傷み、疲れて味が落ちるので、早く動きを止めてあげるのが目的です。やり方は魚の大きさで変えます。
氷締め|小さい魚はこれだけでOK
冷たい潮氷に生きたまま入れて、冷たさで動きを止める方法です。アジやイワシなど小さい魚は、これがいちばん手軽で十分。釣れるたびに、すぐ潮氷に入れていきましょう。
脳締め+血抜き|刺身にしたい中型〜大型に
30cm前後から上の魚を刺身でおいしく食べたいなら、このひと手間がおすすめです。血が身に残ると生臭さの原因になるので、締めてすぐに血を抜きます。
- 脳締め:魚を押さえ、目の少し後ろ(頭の上側)をナイフの先やピックで刺す。一瞬ビクッとして動かなくなれば成功
- エラを切る:エラぶたを開け、エラの付け根の膜をナイフで切る。尾の付け根にも切れ目を入れると血が抜けやすい
- 血を抜く:海水を張ったバケツに頭を下にして入れ、数分おいて血を出す
- 冷やす:血が出たら袋に入れて潮氷へ
脳の位置は魚の種類で少しずつ違うので、最初はうまく決まらなくても大丈夫です。暴れて危ないときは、無理せずタオルで頭を包んで押さえましょう。
神経締め|こだわりたい人向け
脳締めのあとに、細いワイヤーを背骨の中の神経に通す方法です。Hondaの釣り情報サイトでは、血抜きだけの魚は4〜10時間ほどで死後硬直が始まるのに対し、神経締めをすると硬直をおよそ24時間遅らせられると紹介されています。
ただ、専用の道具と慣れが必要です。初心者のうちは、脳締めと血抜きができれば十分おいしく食べられます。
締めや血抜きには、刃先がしっかりした釣り用のナイフがあると作業が早く、安全です。
帰り道の保冷|家に着くまで冷やし続ける
せっかく冷やした魚も、帰り道でぬるくなったら台無しです。釣り場を出るときに、次のことを確認しましょう。
海水は全部捨てず、氷は足す
海水が入ったままのクーラーは重いので、捨てたくなりますよね。ただ、海水を全部捨てると冷たいプールがなくなり、魚が冷えにくくなります。重いときは、魚が浸かるくらいまで海水を減らす程度にして、氷が少なければ足してから帰りましょう。
魚は袋に入れる
袋に入れておくと、冷えすぎや目の濁りを防げるうえ、魚同士がこすれて傷むのも減らせます。帰ってから取り出すのも楽で、クーラーに臭いが残りにくいのもうれしいところです。
直射日光と車内の暑さに気をつける
クーラーは日なたに置くと、外から温まって氷が一気に減ります。釣り場では日陰に置き、車ではトランクより冷房の効く車内に積むのがおすすめです。夏に車の中へ置きっぱなしにするのは避けましょう。
電車で持ち帰るとき
電車の場合は、水がこぼれないことが最優先です。海水は釣り場で捨てて、魚は袋に入れ、氷や凍らせたペットボトルで冷やして持ち帰ります。水抜き栓が閉まっているか、フタがしっかり閉まるかも出発前に確認しておきましょう。
家に着いたら|その日のうちに内臓とエラを取る
家に着いたら、疲れていてもここだけはやっておきたいのが内臓とエラを取ることです。内臓とエラは傷みが早く、生臭さのもとになります。
もうひとつの理由がアニサキス(寄生虫)です。厚生労働省によると、アニサキスはおもに魚の内臓の表面にいて、魚が死んで時間がたつと内臓から身(筋肉)へ移ることが知られています。だからこそ、早めに内臓を出すのが予防になります。
- ウロコを落とす(シンクの中や袋の中でやると飛び散らない)
- 腹を開いて内臓を出し、エラも取る
- 背骨の下の血のかたまり(血合い)を、流水と歯ブラシなどで洗い流す
- キッチンペーパーで水気をしっかり拭く
- ペーパーで包んでからラップか袋に入れ、冷蔵庫へ
刺身で食べるなら、なるべく早く食べ切るのがいちばんです。数日のうちに食べ切れない分は、早めに冷凍するか、火を通す料理に回しましょう。
食べる前・持ち帰る前に知っておきたいこと
アニサキス|酢やわさびでは死なない
アニサキスは、サバ・アジ・イワシ・カツオ・サケ・イカなど身近な魚にもいます。厚生労働省は予防のポイントとして、次の3つを挙げています。
- 鮮度:新鮮な魚を選び、早めに内臓を取る
- 目視:さばくときに身をよく見て、いたら取り除く
- 冷凍か加熱:−20℃で24時間以上の冷凍、または70℃以上(60℃なら1分)の加熱
よくある誤解:料理で使う程度の酢でしめる、塩漬けにする、しょうゆやわさびを付ける、といった方法ではアニサキスは死にません(厚生労働省)。
フグや見慣れない魚は持ち帰らない
堤防ではクサフグなどのフグがよく釣れますが、厚生労働省は、素人がフグを調理しないよう呼びかけています。種類がわからない魚、見たことのない魚も、食べないのがいちばん安全です。毒やトゲのある魚の見分け方は、堤防釣りの注意・安全ガイドで紹介しています。
持ち帰れる大きさ・時期にはルールがある
魚や貝には、都道府県の「漁業調整規則」で、とってはいけない大きさや時期が決まっているものがあります。
たとえば神奈川県漁業調整規則では、海で全長15cm以下のブリは一年中とることが禁止されています。イセエビやアワビ、サザエ、アサリなどにも大きさや時期の決まりがあります。
さらに、アワビ・サザエ・イセエビなどは漁業権の対象で、釣り人がとると密漁になる場所が多くあります。小さすぎる魚は海に返し、ルールが気になるときは行き先の県の水産課のサイトを確認しましょう。
よくある質問(Q&A)
真水の氷だけでもいいですか?
冷やせないわけではありませんが、海水を足した潮氷のほうが温度が低く、魚全体に冷たさが回るので早く冷えます。真水の氷だけで冷やすときは、溶けた水に魚が長く浸からないよう、袋に入れておくと安心です。
血抜きは必ず必要ですか?
小さい魚には不要です。30cm前後から上の魚を刺身で食べるなら、生臭さが減るのでおすすめ。煮物や焼き魚にするなら、潮氷でしっかり冷やすだけでもおいしく食べられます。
氷はどのくらい用意すればいいですか?
決まった量はありませんが、「帰るまで氷が残っている量」が目安です。海水氷は溶けるのが早いので、思っているより多めに。夏は途中で買い足す前提で考えましょう。
釣った魚は何日もちますか?
魚の種類や冷やし方で大きく変わるので、一概には言えません。刺身はできるだけ早く、食べ切れない分は早めに冷凍か加熱調理に回すのが安全です。アニサキス対策の冷凍は、−20℃で24時間以上が目安です。
潮氷にペットボトルの氷を使ってもいいですか?
使えます。ペットボトルの氷は溶けても水が増えないので、帰り道に水がこぼれにくく、電車で帰る日にも便利です。板氷やロックアイスと組み合わせると、冷えも持ちもよくなります。
まとめ
釣った魚をおいしく持ち帰るコツは、釣れたらすぐ冷やすこと。小さい魚は潮氷にそのまま入れ、刺身にしたい大きめの魚は脳締めと血抜きをしてから冷やします。帰り道は氷を切らさず、家に着いたらその日のうちに内臓とエラを取る。
そして食べる前には、アニサキスとフグ、持ち帰りのルールだけは忘れずに。ここまでできれば、釣りの帰りの晩ごはんがぐっとおいしくなります。
あわせて読みたい








コメント