冬の山頂で写真を撮ろうとしたら、さっきまで50%あったスマホの電池がいきなり0%になって電源が落ちた。スキー場のリフトの上で、キャンプの夜にテントの中で——冬のアウトドアでは、こんな経験をした人が少なくありません。
これはスマホが壊れたわけではなく、中のリチウムイオン電池が寒さに弱いことが原因です。
この記事では、寒いとスマホの電池が急に減ったり切れたりする理由と、冬山・スキー・キャンプでできる対策を、AppleやGoogle、Samsung、シャープなどのメーカーや、自治体の情報をもとにまとめました。
先に結論:iPhoneの推奨使用温度は周辺温度0〜35℃。それより寒い所では、電池の減りが一時的に早くなったり、電源が切れたりします。暖かい場所に戻せば元に戻るので、壊れたわけではありません。冬のアウトドアでは、スマホを外気にさらさずポケットやカバンに入れ、予備のモバイルバッテリーを持ち、冷えたスマホを急に温めないことが大切です。
寒いとスマホの電池が減る・切れる理由
スマホの電池(リチウムイオン電池)は、中で化学反応を起こして電気を取り出しています。この反応は、温度が下がると鈍くなります。
NTTドコモは、低温では室温に比べて電池の中の電解液の粘りけが増して抵抗が大きくなるため、電池の減りが大きくなると説明しています。北海道立総合研究機構の研究でも、温度が下がると電池の中の抵抗、とくに反応の抵抗が大きく増えることが確かめられています。
抵抗が大きくなると、電池は同じ量の電気を取り出しにくくなります。その結果、表示上はまだ残量があるのに、急に0%になったり電源が落ちたりします。Googleも、Pixelの温度が0℃を下回ると突然シャットダウンすることがある、と案内しています。
寒さによる減りは「一時的」
安心してほしいのは、多くの場合これは一時的な現象だということです。
Appleは、極端な低温でiPhoneを使うとバッテリーの消耗が一時的に早くなったり電源が切れたりすることがあるが、「より温度の高い場所にデバイスを戻すと、バッテリーの駆動時間も通常の状態に戻ります」としています。
ただし、寒い場所に長く置き続けるのはよくありません。Samsungは、0℃未満の場所で長時間使ったり保管したりするとバッテリーの性能が悪くなり、予期しないシャットダウンを招いて持ち時間が短くなるおそれがある、としています。
メーカーが示している使用温度
主なメーカーが公式に示している、スマホを使うときの温度の目安です。
| 機種 | 使用温度の目安(公式) |
|---|---|
| iPhone(Apple) | 周辺温度0〜35℃。保管は-20〜45℃ |
| Galaxy(Samsung) | 最適使用温度は0〜35℃ |
| AQUOS sense8(シャープ) | 5〜35℃(充電も含む) |
| Google Pixel | 0℃を下回ると突然シャットダウンすることがある |
ドコモも、スマホは0〜35℃での利用を勧めています。つまり、氷点下になる冬の山やスキー場、キャンプ場の夜は、多くのスマホにとって「推奨の温度の外」ということです。Appleは、バッテリーにとって最適な温度は16〜22℃としています。
冬のアウトドアで電池が切れやすい場面
とくに電池が切れやすいのは、スマホが外の冷たい空気に長くさらされる場面です。たとえばこんなときです。
| 場面 | 気をつけたいこと |
|---|---|
| 冬山・雪山の山頂 | 風が強く、写真や地図アプリでスマホを外に出す時間が長い |
| スキー・スノーボード | リフトの上やゲレンデで、ウエアの外ポケットに入れっぱなし |
| 冬キャンプの夜 | 氷点下のテントの中に置いたまま寝てしまう |
| ワカサギ釣り・冬の釣り | 氷の上や水辺で、長時間スマホを手元に置く |
しかも冬のアウトドアは、地図アプリでのナビや、写真・動画の撮影など、電池を使う場面が多くなりがちです。寒さによる減りと使いすぎが重なると、思った以上に早く電池がなくなります。
今すぐできる対策
1. スマホを外気にさらさない
いちばん効くのは、スマホを冷やさないことです。ドコモは、直接外気にさらされないようにポケットやカバンにしまっておくことを勧めています。
ウエアの外側のポケットより、体温が伝わりやすい内側のポケットに入れておくと冷えにくくなります。写真を撮ったら、すぐにしまうのを習慣にしましょう。
2. 予備のモバイルバッテリーを持つ
冬山では、予備のバッテリーは「あると便利」ではなく必需品です。長野県の登山安全ガイドは、山での遭難の通報の約8割が携帯電話だとして、「バッテリー切れでは通報できないので、予備バッテリーを携行しよう」と呼びかけています。
宮城県警も、冬の山岳遭難に備えて携帯電話と予備バッテリーを持っていくよう呼びかけています。
ただし、モバイルバッテリーも寒さに弱いのは同じです。Ankerはモバイルバッテリーの使用温度の範囲を0〜40℃としていて、極端な低温に弱いと説明しています。モバイルバッテリーも、スマホと同じように体に近いポケットに入れておきましょう。
3. 省電力の機能を使う
iPhoneの「低電力モード」は、バックグラウンドの処理を減らしたり、画面の明るさを下げたりして電池を長持ちさせる機能です。
Androidにも「バッテリーセーバー」があり、シャープのAQUOSには「長エネスイッチ」という省電力機能があります。電池の減りが気になったら早めにオンにしましょう。
登山で地図アプリを使うなら注意
Googleによると、Androidのバッテリーセーバーは、画面がオフのときに位置情報サービスが動かなくなります。登山アプリでGPSの記録を取っている場合は、記録が途切れることがあるので設定を確認してください。
機内モードにして電池を節約する人もいますが、機内モードのままだと電話や位置情報の送信ができません。
長野県は、登山中はアプリを起動して、電波の通じる場所では機内モードを解除するなどして位置情報を残すよう案内しています。登山地図アプリの使い方は登山地図アプリの選び方・使い方にまとめています。
4. 冷えたスマホを急に温めない
冷え切ったスマホを、いきなり暖かい所に持っていくのも要注意です。シャープは、寒い場所から暖かい場所へ移動するときは、端末が常温になってから持ち込むよう案内しています。急な温度変化は結露の原因になり、内部が腐食して故障につながることがあるからです。
ドコモも、冷えたスマホをすぐ暖房器具の近くに置くのは避けるよう呼びかけ、暖房器具の近くにしばらく置いていると、最悪の場合は電池が破裂・発火するおそれがあるとしています。
Googleも、スマホは徐々に温めるよう案内しています。ストーブやたき火のそばで温めるのはやめましょう。
5. 冷えたまま充電しない
寒い所での充電も避けたいところです。Appleは、低温になりすぎると充電されなくなったり、充電が止まったりすることがあるとしています。
シャープは充電を5〜35℃の場所で行うよう案内していて、Samsungも極端に低い温度での充電はバッテリーの劣化を招くおそれがあるとしています。スマホが冷えているときは、常温に戻してから充電しましょう。
6. スマホだけに頼らない
どんなに気をつけても、電池が切れることはあります。冬山に行くなら、行き先やルート、帰りの予定を家族や友人に伝えておくこと。
長野県も、スマホのバッテリー切れなどに備えて、事前に家族や友人に登山の詳細を伝えておくことが重要だとしています。紙の地図やヘッドライトなど、スマホがなくても困らない装備も持っていきましょう。
キャンプの夜、スマホはどこに置く?
冬キャンプでは、夜のあいだスマホをどこに置くかも悩みどころです。氷点下になるテントの中に出しっぱなしにすると、朝には電池がかなり減っていることがあります。
一方で、寝袋や布団の中にスマホを入れたまま寝るのも、おすすめできません。ソニーはXperiaについて、暖房器具のそばや、こたつ・布団の中で使ったり、置きっぱなしにしたりしないよう注意しています。
とくに充電しながら布団や寝袋の中に入れるのは避けましょう。Ankerも、モバイルバッテリーに布団や衣類をかけた状態で使うと、火災などのトラブルにつながる危険があるとしています。
寝るときは、スマホとモバイルバッテリーを充電せずに枕元のポーチやカバンにしまっておき、朝、温まってから充電するのが無難です。
電源サイトなら、テントの中で電気毛布を使いつつ、充電は起きている時間に済ませておくと安心です。電源サイトでの電気の使い方は電源サイトとはで紹介しています。
よくある質問
寒さで電池が劣化することはある?
寒さによる減りの多くは一時的で、暖かい所に戻せば元に戻ります。ただ、Samsungは0℃未満の場所で長時間使ったり保管したりするとバッテリーの性能が悪くなるおそれがあるとしています。
北海道立総合研究機構の研究でも、氷点下で充電と放電を繰り返すと電池の劣化が見られました。寒い所に長く置きっぱなしにしない、冷えたまま充電しない、が基本です。
寒さで電源が切れたらどうする?
無理に何度も電源を入れようとせず、ポケットの中など体温で少しずつ温まる場所に入れて、しばらく待ちましょう。電池の温度が戻れば、電源が入ることが多いです。ストーブやたき火で急に温めるのは、結露や電池のトラブルの原因になるので避けてください。
カイロで温めてもいい?
カイロについてメーカーが公式に見解を出しているものは見つかりませんでした。ただ、各メーカーは「暖房器具の近くに置かない」「急に温めない」「徐々に温める」と案内しています。
カイロをスマホに直接貼りつけて温めるのは避けて、体温で温まる内ポケットに入れておくくらいにしておくのが無難です。
モバイルバッテリーも寒さに弱い?
弱いです。Ankerはモバイルバッテリーの使用温度を0〜40℃としていて、極端な低温に弱いと説明しています。スマホと同じように、体に近いポケットに入れて冷やさないようにしましょう。
iPhoneとAndroidで寒さへの強さは違う?
機種によって公式の使用温度は違いますが、どちらもリチウムイオン電池を使っているので、寒さで電池の減りが早くなるのは同じです。iPhoneもGalaxyも、公式の使用温度の下限は0℃。氷点下の場所では、どの機種でも外気にさらさない工夫が必要です。
まとめ:冬はスマホも「防寒」してあげよう
寒いとスマホの電池が急に減るのは、リチウムイオン電池が低温で電気を取り出しにくくなるからです。多くは一時的なもので、温まれば元に戻ります。冬のアウトドアでは、スマホを人と同じように寒さから守ってあげることが、いちばんの対策です。
この記事の要点:①iPhoneの推奨使用温度は0〜35℃。寒いと電池の減りが一時的に早くなる②暖かい場所に戻せば元に戻る③外気にさらさず、内ポケットやカバンに④予備のモバイルバッテリーを。これも体の近くに⑤冷えたスマホは急に温めない(結露)、冷えたまま充電しない⑥寝袋や布団の中で充電しない。
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